宮古島の中で、台風から家を守るために、家の周りにはよく福木(フクギ)という木が植えられるそうです。
“どっしりとかまえるその存在がいいな、と思って宮古上布を守るという意味を込めて、福樹工房という名前をつけました”
そう話してくれたのは、工房設立者の神里 佐千子さん。
工房は福木ではなく福樹としますが、その文字ひとつにも神里さんのこだわりが表われています。
“木ではなく樹という字のほうが音の響きがいいというのもありますが、なにより樹という字のほうが、
少しのことでは揺らがないようなたくましさがあるから好きなんです”と神里さんはいいます。
工房の中を拝見させていただくと、木で守られているようなぬくもりがありました。
工房の庭にはたくさんの植物が植えられており、みんなで可愛がっている猫がのんびりとお昼寝していました。
穏やかな居心地の良い空気がこの福樹工房に流れていると感じました。
宮古島は染料の島と呼んでも良いくらい植物染料が豊富にあります。
宮古上布は主に琉球藍による染色がされていますが、宮古島の土地にあった染料も自分たちで栽培してゆきたい、と神里さんはいいます。
今後は苧麻の栽培に加えて藍の育成や泥藍づくりにも力を入れていき、糸から染め、
織りまで工房独自の宮古上布を生み出していきたいという抱負を聞かせてくれました。
“これから織りをやってみようとする人たちの中には宮古上布といえば十字絣といった意識を持つ人もいるけれど、
それだけでひとくくりにしてしまわずに、宮古上布の歴史や流れというものも踏まえながら、それぞれの作風が出るような織りをやっていきたいです。
宮古上布とはなんだろう、ということを問いかけながら、一緒に勉強していきたいです”と神里さんはいいます。
新しく織りを始めた人たちがどんどん成長していくのを間近で見ていられることはこの上ない喜びだと話してくださいました。
“教えた人たちが独立して、頑張って織りを続けていくのを応援したい。たくさんの人がこの工房から巣立っていって欲しい。
それぞれが自分の宮古上布を作っていけるように良いものを目指してみんなで頑張ってゆきたいです”
神里さん自身が勉強熱心であるからこそ、安心して作品に打ち込める環境がこの福樹工房にはあります。